母乳のたいせつさ

 

 

<赤ちゃん時代の母乳栄養が、

しあわせな人生をつくります>

 

なぜ母乳が、それほど大切なのでしょう。

 

乳児時代の腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが、

一生涯のバランスに大きく関わるからです。

 

母乳栄養のみの時、善玉菌の率は約99%。

母乳には700種もの良い細菌が含まれるなど、体内すべての細菌叢(フローラ)を良い状態に作っていきます。

 

しかし粉ミルク(人工栄養)が加わると、約30~40%が悪玉菌になります。

腸内環境=便通の程度ではありませんが、一例として健康のバロメーター、便通が滞りがちになる事がしばしばです(成人であっても、一日1~3回以上のお通じが本来、必要なのだそうです)。

<一度もミルクを飲んだことのない、乳質の良い母乳で育つ乳児は、授乳回数と排便回数が同じくらいのことが多いです。

母乳を飲むたびに、ところてんのように押し出されて排便がスムーズです>

 

善玉菌は、ビタミンB群などビタミンやホルモンを作ったり、

最近話題の肥満防御物質「短鎖脂肪酸(優れた抗炎症作用もあります)」を作ったり、

免疫細胞の活性化(免疫細胞の7~8割は腸で作られます)、IgA(免疫グロブリンA)産生や

消化吸収を助け、病原菌を体外へ、特に腸内から追い出します。

さらに、ガン細胞の発育・コレステロール値・血糖値・高血圧値・アレルギーの原因IgE抗体、

これらの抑制作用などなど。

 

「腸は第2の脳」と言われていましたが、今は「脳は第2の腸」と言われるようになりました。

脳よりも、腸が上位器官であると認識されるようになったからです。

 

まさしく、腸内フローラは健康の心臓部。

心身の健康は、善玉菌がつかさどっているとも言えますね。

 

幸せを感じるハッピーホルモン・セロトニンやドーパミンも、善玉菌のおかげで分泌されることが判明し、

明るく楽しい人生を感じ取れるかどうか、といった性格や思考・行動パターンに関わることさえ

赤ちゃん時代の母乳栄養率に大きく左右されることがわかりました。

悪玉菌の多い方は、不安感や恐怖心が強い傾向、ということが研究で明らかになっています。

 

<海外では、難病や精神疾患・自己免疫疾患・アレルギー疾患など、悪玉菌が多いことが一因で罹患する多くの病に「糞便移植療法」が標準治療法とされ始めています。

ナショナルジオグラフィック誌等々で紹介されていますが、自閉症・発達障害の発症は近年、腸内細菌叢との関連が大きいとされていますし、偏頭痛などほとんどの病の主原因が腸脳相関(Gut-Brain Link)にあるということがわかってきました。

 

マサチューセッツ工科大学の著名なStool Bank(糞便バンク)研究所を始め、世界中で研究が行われています。

悪玉菌の多い腸内に、善玉菌の多い便を移植すると、寛解していく病が少なくありません。

最近は、海外において善玉菌の多い便が、高額で取り引きされるようになってきました。

 

日本でも、難病の潰瘍性大腸炎の中でも、特に難治度の高い患者さんのみ、順天堂大学病院などで糞便移植療法を試験的に行っています。

善玉菌を増やすだけで8割の患者さんが寛解・治癒してしまうのだそうです。

 

逆に、悪玉菌の割合が多いと、一概には言えませんが便秘がちになることが多いです。

ごく一例ですが、便秘の方の乳ガン罹患率は、便秘ではない方の4~5倍です。

(腸内環境が悪いと、ガン細胞をやっつけるNK細胞の活性が弱いからです)

便秘の方は、あらゆる病のリスクが高いのだそうです。

 

長寿の島として有名な沖縄県南大東島で最高齢101歳Tさん(健康男性)の腸内善玉菌環境は(辨野先生調べ)、

ビフィズス菌12%、乳酸菌8.6%、酪酸菌68.7%

(一般人平均値はそれぞれ5%、1%以下、15%)

 

世界的ベストセラー『あなたの体は9割が細菌』でも、母乳育児が重要であることを訴えています。

つまり、乳児時代に「質の良い(これがもっとも重要です。質の良くない母乳は少しずつ腸内環境を悪化させていきます)」母乳栄養で善玉菌の割合を増やし、悪玉菌を増やす粉ミルクを少しでも減らしておけば、生涯、心身共に健康にハッピーに過ごせる率が高まるのです。>

 

大人になって、生きて腸まで届く乳酸菌やビフィズス菌をたくさんとればいいって思われるかもしれません。

でもそれは定着するわけではなく、一時しのぎでしかないのです。

 

乳児時代の腸内環境(善玉菌と悪玉菌の種類・比率・量)が、

一生の比率に最も大きく影響しています。

 

乳児時代に、質の良い母乳栄養中心で善玉菌の割合が高かったお子さんは、

大人になって薬物を内服したりなど腸内環境が悪くなろうと、

またいずれ善玉菌の割合が少しずつ復活してくれることも多いのです。

(特に日齢・月齢が浅いほど影響が大きいため、できるだけ速やかに質の良い母乳の割合を増やすことが大切です)

 

ですから、母乳栄養で育ったお子さんは、大人になって、

発ガン率、成人病・消化器疾患等あらゆる疾患罹患率はもちろん、

精神病罹患率も低く、学習能力などは高い、

等々の、有益な多くの研究結果が出ています。

 

少しでも母乳の割合を多くして、粉ミルクの割合を減らすことが、

生涯の、心身共に元気な健康をつくることが明らかになりました。

30~40種もの化学合成添加物で構成される粉ミルクは、腸内環境を悪化させます。

食べ物は、数日したら朽ちていく、生きている食物が中心であるべきです。

同種のタンパク質、生きている栄養<母乳>を少しでも多くあげましょう。

(単なる母乳ではなく、質の良い母乳であることが非常に大切です。

完全母乳であっても、夜間断乳などで乳質が落ちると悪玉菌が増えて便通が減ったり、心身ともに体調が悪化しやすいと感じる事が多いです。)

 

母乳はビタミンD不足で、くる病になる、鉄分不足で発達障害になる、DHAが不足している…

科学的根拠の低いデータにまどわされず、正しい情報を見極めていけることが子育てには大切だと思います。

つい最近まで人工ミルクがなかった私たちの祖父母世代は、今より心身ともに健康だったのではないでしょうか。

加工されたDHAやビタミンを多く摂取することは良くない、とのデータもあります。

 

母乳はその時その時のお子さんに合った、オーダーメイドの成分で作られます。

赤ちゃんの唾液(近年、唾液は膨大な情報量を含む事がわかってきています)を乳腺が吸い取って分析し、最適な栄養等の配合をその場でカスタマイズしているのです。

小さく産まれた赤ちゃんにはカロリー高めの母乳が、

月齢の進んだ赤ちゃんには、内蔵や組織への負担をへらした適切な成分による完全栄養食としての母乳が、

そして病気の赤ちゃんには、罹患した感染症の抗体をつくり、免疫物質をさらに多く含む母乳が分泌される、自然の摂理・自然のめぐみです。

 

アメリカでは、他人の母乳がガン患者さんに販売されているように、粉ミルクには含まれないスーパー免疫物質が母乳には豊富に含まれています。

(もちろん生後半年を過ぎても母乳育児期間中ずっとです。)

(さらに、科学的根拠のある論文はすべて、母乳が虫歯の直接原因になることを否定しています。

多くの関連論文を評価する文献レビューにおいても否定されています。

母乳はアルカリ性であり、また母乳中の700種の良い細菌が、口内フローラ等へ良い影響を与え続けます。

最近は母乳が再石灰化を促す、とする論文が出ました。

4~7才まで授乳しているチンパンジー、オランウータン、ゴリラに虫歯はありません。

長期授乳で歯並び・咬合が良くなる、と発表をされている九州大学・小児口腔外科の教授や歯学博士もいらっしゃいます。)

これほどの「ヒトへの万能薬」は他にないかもしれませんね。

 

国民幸福度の高い国は、いずれも比例するように母乳哺育率が非常に高いのです。

世界幸福度ランキング2年連続1位のデンマークの完全母乳育児率は98%。

(2位のノルウェーも99%)。

ちなみにデンマークはOECD加盟国中、子どもの貧困度が最下位です。

母乳育児に熱心な開発途上国ほど、経済が伸びています。

わが子だけではなく、周りの方々へも母乳育児を勧めることが、将来の日本や世界の益につながる種となるでしょう。